執筆開始から7年、3年ぶりの辻村 深月さんの新作として2026年6月に刊行され、
話題となっている『ファイア・ドーム』。
上下巻というボリュームをまったく感じさせない社会派ミステリーで、
臨場感あふれるリアルな描写は圧巻でした。
あらすじ
25年前の夏、平穏だったはずの地方都市は、
百貨店受付嬢誘拐殺人事件の発生、
その報道により揺り動かされ、
「噂」という大量の炎が降り注ぎ、燃えさかった。
ようやく静けさを取り戻したかに見える町に
燻り続ける因縁が、いま新たな事件を呼び起こす――。
(公式ホームページより)
感想
噂がテーマとなっている本書ですが、言葉や発信することを深く考えるきっかけとなりました。
悪意の有無にかかわらず、人を追い詰めてしまうことがあるという怖さがリアルに描かれています。
”噂は、軽薄で残酷な娯楽だ。”
25年前に起こった誘拐事件にまつわる噂に翻弄される人々の様子が描かれます。
地方社会の狭い環境ならではの閉塞感や、SNSを中心とした現代の発信に関してなど、
誰の身近にでも起こりうる問題が取り扱われています。
事件についての根も葉もない噂をどうして皆信じてしまったのか。
誰にも悪意はなく、ふざけてもいないのに全くのデタラメがまことしやかにささやかれ続け、
事件からどれだけ時がたってもその空気は消えずに残り、狭い社会で孤立を生む。
大きな事件に魅了された周囲の悪意のない当事者意識はとてもおそろしく、
読み進めながらゾッとしました。
複数の登場人物の視点で物語が展開されていき、スラスラ読むことができますが、
心理描写がとてもリアルで何度も読んでいて苦しくなりました。
誤解を生むような内容の記事が出てしまい、SNSでの無責任な発信で追い詰められていく様は
本当に息が詰まる思い出読みました。
また、小学生の子どもを持つ母として本当に胸が痛む事件が起こっており、
頑張る子どもたちを応援しつつも、ずっとハラハラしながらページをめくっていました。
噂に翻弄された人々が日々を取り戻していく物語でもあり、
辛い過去や思いを、それぞれのやり方で許したり乗り越えて、
今という日々を取り戻していく展開は胸があつくなりました。
また、タイトルである『ファイアー・ドーム』の意味が作中で明らかになり、
美しいと感じていた装丁に対する印象が切ないものに変わりました。
ぜひ読んでみて、改めて表紙を眺めてみてください。
まとめ
『ファイア・ドーム』は噂をテーマに、現代社会の問題を取り扱ったミステリー小説です。
わたし達の身近にある問題が多数描写され、都度自分を振り返るきっかけを与えてくれます。
なにげなく発信している内容や、信じてしまいがちな噂に囲まれて生活していますが、
本当にそれは真実なのか、軽率な反応をしてしまっていないか。
悪意がなくとも誰かを追い詰め、傷つけてしまうということを再認識させられる作品でした。
この読書体験を通じて、自分自身の言葉とのかかわり方を見つめなおすきっかけとなりました。
是非、読んでみて自分を振り返ってみてほしいと思います。
|
価格:4180円 |
![]()


コメント